アンデシュを抱くアナ
次の表現法へと話を移そう。特に興味深いこととして、アナが自殺をするに至るまでの一連の経過が挙げられる。それは映画の初めのころのシーンから認められる。橋の上でアナはアンデシュを抱くが、この行為はラストの「一緒に」投身自殺をするときと同じ行為である。この橋の上にいるとき、アンデシュは「2人だけでどこかへ行こう」と言う。アナはどこかへ行くことを約束するが、アナが死への恐怖感を失うまでその約束は履行されない。管理人が血を流し、ヘルゲが急いで部屋まで駆け付け、ドアを開けようとしたそのとき、追い詰められたアナは自殺する。追い詰められたことでアナの死への恐怖は消え去ったのだ。アナはアンデシュと一緒に旅立つ心構えができたのだ。
自殺への伏線は、この記事のプロローグ冒頭で引用したアナの台詞にも認められる。アナは、「(アンデシュが危機に陥ったら、)あの人たちから必ず逃げ切ってみせる。その日は決して遠くはない」と言っている。この台詞の「逃げる」は「飛ぶ」の意味でもある。本記事で頻繁に取り上げるシーンである、“近所の少年”がアンデシュの家に来て、突然どこかへ行ってしまう、そしてアナとアンデシュはアパートを描いた絵が血で汚されていることに気がつくシーン。その絵には地に伏した死体が描かれており、これは飛び降り自殺への強い伏線になっている。また、アナがその少年を探して子供部屋にいるとき、アナのそばにある窓は大きく開いている。ラストでアナが投身自殺をするのは、その窓からである。